足りないのは「読解力」|『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』について「第3章 教科書が読めない」に絞って要約しました

教科書が読めない子どもたち

こんにちは!

シュフで2児の父、シロイクジラです。

今回は『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子著)を取り上げます。

話題になった本ですよね。

読みたいと思っていたけど、忙しくて手を付けられなかった方も多いのではないでしょうか。

ここでは、ぼくが個人的に大事だと思ったところだけを要約します。

すなわち、4章立ての本書のうち、第3章「教科書が読めない―全国読解力調査」だけに絞ってレビューします。

目次

先に結論

結論を先に申し上げますと、日本の中高校生の読解力は危機的と言ってよい状況にあります。(中略)中高校生の読解力が危機的な状況にあるということは、多くの日本人の読解力もまた危機的な状況にあるということだと言っても過言ではないと思われます。

P172-173
シュレーゲル

だからどうなの?

クリエイティブで交渉能力が高く、直観力に優れている「トップガン」な人材が不足しているという意味ではありません。(中略)そうではなくて、仕様書を正しく理解して、手順書どおりに作業をし、いわゆる「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」がきちんとできるあたり前の人材が、いくら人事にコストをかけても採れていないというのです。

P243

つまり、読解力の低下により、「書類を読んで理解してその通り処理する」という当たり前のことすらできない程、人材の劣化が進んでいるということです。

シュレーゲル

それがAIとどう関係があるの?

読むのは苦ではないのに、中身はほとんど理解できていないということが起こり得ます。コピペでレポートを書いたり、ドリルと暗記で定期テストを乗り切ったりすることはできます。けれども、レポートの意味や、テストの意味は理解できません。AIに似ています。AIに似ているということは、AIに代替されやすい能力だということです。

P230

読解力がないと、テクストを読んでその内容を理解するのではなく、表層的なスキルでその場を乗り切ろうとする。

そして実際に乗り切れてしまうので、本質的な読解力・理解力ではなく表層的なスキルが身についてしまう。

でも、その表層的スキルはAIに代替される可能性が高い。

よって、読解力がない人材は「将来的にAIに仕事を奪われる可能性が高い」ということです。

人間がAIに勝る能力=読解力

AIはすごい能力を持っています。

ある分野においては、人間を超える能力を持っています。

でもそれは万能ではありません。

AIの弱点は、万個教えられてようやく一を学ぶこと、応用が利かないこと、柔軟性がないこと、決められた(限定された)フレーム(枠組み)の中でしか計算処理ができないことなどです。繰り返し述べてきたとおり、AIには「意味がわからない」ということです。ですから、その反対の、一を聞いて十を知る能力や応用力、柔軟性、フレームに囚われない発想力などを備えていれば、AI恐るるに足らず、ということになります。

P171-172

今後AIに代替される分野も増えます。

一方で、AIが代替できず、人間が優位な分野も残り続けることになります。

AIの導き出す答えはあくまでパターンです。モノゴトの本質ではありません。

読解力というのは、人間が優位に立つための基礎能力のひとつです。

読解力低下の例

学生との論理的な会話、設問と解答との間で、会話が成立しないと感じるシーンがあまりにも増えている。そう、多くの教員が感じている。そのため、実態を正確に把握する必要を痛感し、このような調査をする決断をしたのです。

P181

本書には、実際調査に使われた設問が紹介されています。

ここでは2つ紹介します。

例1(本書P195-196から引用)

次の文を読みなさい。

仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアに、イスラム教は北アフリカ、西アジア、中央アジア、東南アジアにおもに広がってる。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

オセアニアに広がっているのは(  )である。

①ヒンドゥー教 ②キリスト教 ③イスラム教 ④仏教

正解(クリックで開きます)

②キリスト教

サンショウウオ

バカにしてるのか?

正直、ぼくも初めはそう思いました。

だって、それ以外に答えようがないんですから。

でも、この問題の正答率は、学生62%、高校生72%です。

著者が指摘するように「中学生の3人に1人以上が、高校生の10人に3人近くが正解できなかったと理解すべき(P196)」だと思います。

ちなみにAIは正解したそうです。

例2(本書P200から引用)

次の文を読みなさい。

Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性のAlexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

Alexandraの愛称は(  )である。

①Alex ②Alexander ③男性 ④女性

正解(クリックで開きます)

①Alex

この問題もAIは正解だったそうです。

ちなみに正答率は、中学生38%、高校生65%です。

この問題の場合は四択ですから、問題を読まずに適当に選択肢を選んでも、25%は正解してもおかしくありません。それに対して、中学1年生の正答率は23%。ランダム並み、サイコロを振って答える程度だったのです。

P201

「Alexandraの愛称は(④女性)」という回答も多いようです。

シュレーゲル

なんでそうなるの?

どうしてでしょう。おそらく「愛称」という言葉を知らないからです。

P202

つまり、語彙の少なさが関係している可能性があるそうです。

このような平易な文章問題とその正答率の低さが、他にもたくさん紹介されています。

実際に本書を読んでいただければ、危機感が伝わってくると思います。

だって、この程度の文章が理解できない新人に会社の契約任せられますか?

読解力を上げる方法=研究データなし

では、どうすれば読解力を向上させられるのか。

気になりますよね。

残念ですが、その答えは本書にはありません。

なぜならデータがないから。

では読解力を養うにはどのようなことが有効なのか。残念ながらそれを解明する科学的な研究は今のところありません。

P243

中途半端な解決策を示されるよりはいいですよね。

なので、自分たちで考えて行動に移すしかないようです。

カナヘビ

普段から意図的に言葉に触れる機会を増やすことくらいしかないですよね。
安易に「本を読め」とは言いたくありませんが、同じ言葉でも音で聞くのと文字で見るのとは印象が違いますよね。
ゲーム実況などの動画を子どもと見ていると、語彙が少ないのと、間違った言葉遣いも散見されます。テレビのようなチェックがないのは功罪ありますね。

まとめ

問題文に出てくる数字を使ってとりあえずなんらかの式に入れて「当てようと」してしまう。なぜそんなことをしてしまうのか?フレームが決まっているドリルでは、それが最も効率の良い解き方だからです。(中略)フレームが決まっていると、子どもは教える側が期待しているのとは別の方法で、そのフレームのときだけ発揮できる妙なスキルだけを偏って身につけてしまうのです。

思い出してください。フレームが決まっているタスクはAIが最も得意とする作業です。そのような能力は、人間より遥かにスピードが速く、エラーも少ない、そして何よりも、安価なAIに代替されてしまいます。

P231-232

テストで良い点をとるだけの、その場しのぎのスキルは、まさにこれからはAIの独壇場です。

今までは誰も気づかなかった。だからそれでよかったかもしれない。

でも、これからはそんなメッキはすぐに剝がれてしまいます。

そして、そんなところからAIにとって代わられてしまう。

だからそうならないために、しっかりと読解力を身に着ける教育をしていく必要がある。

本書の第3章を読んで、ぼくはそう理解しました。

考え方が安易かもしれませんが、テストの点数で評価される、結果だけで評価されるシステムが、学問の本質ではなくうわべだけでなんとかしようする若者を生み出しているようにも思います。

ある役所の例

ぼくが勤務していたのと別の役所の人事課長から聞いた話です。

その自治体で税金の計算ミスがありました。

謝罪会見をするレベルの事故でした。

人事課長は、税務課の担当職員にミスの原因の聞き取りを行いました。

「なぜ、そのような処理をしてしまったのか?」

人事課長は、税務課職員の「法律の解釈」に誤りがあったと考えていました。

ところが、回答を聞いて唖然としたそうです。

「システムでそうなっていたから」

ぼくはその話を聞いて、「たぶん読むのが苦手で法律を読むことすらしなかったんだな」と感じました。

さいごになりますが、本書を読んでから、自分の子どもの様子を気をつけて見るようになりました。

気づいたことがあります。

国語の文章問題が解けない理由は、文章を読んでから設問を読むのではなく、設問を読んでから文章の中に答えを探しにいっているから。

算数の文章問題ができない理由は、設問の意味を理解できていないから。何を問われているのかがわからないから。

本書と同じ現象が目の前にあって、ショックでした。

でも、本書を読まなければ、何が問題であるかすら気づくことができなかったと思います。

うちでは、小学校低学年のうちにそれを発見できたので、少しずつ改善できるようにサポートしていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!

紹介した本

書名 AI vs. 教科書が読めない子どもたち 

著者 新井 紀子

出版 東洋経済新報社

教科書が読めない子どもたち

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