偉い人って会議が好きですよね。
会議に出ることが仕事になっていて、会議に出ている自分に酔っているんじゃないかと思ってしまいます。
それに付き合わされる若手はたまったもんじゃない。
その会議中、仕事がたまっていくわけですから。
偉い人たちも、若い頃、同じ経験をしたと思うんです。
でも不思議なことに、「だから会議を改善しよう」ではなくて、「お前たちにも同じ苦しみを味あわせてやる」って思考回路になっているんですよね。
ということで、残念ですが自己防衛していくしかありません。
幸いにして、会議のしきりは若手がやることになっています。
紹介する2冊をうまく活用して、みなさんが会議地獄から抜け出すことを願っています。
『最高品質の会議術』|前田鎌利(ダイヤモンド社)
会議を効率化するための具体的なテクニックが詰まった一冊です。
ムダな会議に困っている方には、忙しくてもぜひ一度読んでいただきたいです。
退職するまで会議はなくならないので、早いうちに読んでおくのがオススメです。
会議は「1円」たりとも生み出さない
まず、基本認識から。
会議の目的は「何かを決めること」。
組織として「意思決定」することです。
でも、決まっただけでは利益は生まれません。
決まった内容を現場に落とし込んで、現場が活動して初めて利益が発生します。
むしろ、会議そのものはコストです。
マネジャーを含めて11人のメンバー(平均年収500万円・時給換算2500円)がいるとして、毎週1時間の定例会議で1回につき人件費だけで2万7500円。年間45回開催で123万7500円。
P18
これだけコストをかけるからには、それ以上のリターンを得なければなりません。
つまり、意思決定というリターンを最大化するという目的以外に、「関係者が集まる」というコストをかけるのはムダだということ。ですから、「会議の品質」を高めるためには、意思決定にかかわらない要素は、可能な限り排除することから着手する必要があるのです。
P20
なので、情報共有のための会議、進捗報告だけの会議は、そもそも開催しないこと。
報告だけなら、メール等でデータを共有しておけばいいのです。
そして、「組織として」意思決定をしなければいけない場合のみ、会議をセットすればいい。
「組織として」を強調したいのは、自分ひとりで、または自部署単独で意思決定できるにも関わらず、関係者を集めて「組織として」意思決定しようとするケースが多いからです。経験上、このようなケースは責任逃れしたい場合、つまり「ひとりで意思決定すると、責任もひとりでとらないといけなくて怖いから、みんなで決めたことにしたい」場合に多く表れます。
会議は意思決定するものなので、単なる情報共有のための報告は必要ありません。
では、会議の中で行う報告とは、どのようなものであるべきか。
それは、「ネクストステップ」がある報告です。
「ネクストステップ」とは、報告内容を受けて、「これからどうするのか?」を提案するということです。つまり、「報告+ネクストステップ」が示されて、はじめて報告と認識すべきなのです。
P61
簡単に言うと、「で、どうするの?」に対する答えがネクストステップです。
「事業費が不足する見込み」という事実だけであれば、メールで十分です。
その事態にどう対応するか。「予算を増額する」や「事業規模を縮小する」というネクストステップが示されて、はじめてメンバーが会議の中で議論する意味が生まれます。
70点の意思決定
「よい意思決定とは何か?」
本書には以下のように書かれています。
まず第一に、「速い」ことです。(中略)意思決定が遅いということは、現場の動きを止めるということにほかならないということ。「遅い」というだけで、生産性は確実に下がるのです。
P29
そもそも、ビジネスにおいて100%の成功が保証された意思決定などありえません。(中略)
であれば、「70点の意思決定」でよいから、とにかく実行してみることが大切です。(中略)
PDCAサイクルを回した結果、「撤退」の意思決定を迫られることもありますが、それを恐れてはなりません。「7割の成功確率がある」と判断したうえで「やる」という意思決定をしたのであれば、その「撤退」もPDCAのプロセスにあると捉えるべきです。
P32
100%正しい意思決定はムリ。
正論だと思います。
ただ、こう言ってくれる人ってなかなかいないんですよね。
責任をとることにびびって意思決定できない人が多い場合は、スケジュールを厳しめに設定する、次回の会議は開かない、会議時間は30分にするなど、物理的な制約を増やしていくことで、70点の意思決定を促していくのがいいと思います。
会議は30分
「人間の集中力は15分周期(P47)」とのことで、前半の15分をインプット、後半の15分をアウトプットに使って、30分で会議を終わらせるという方法です。
前後半で多少のズレはあったとしても、30分という縛りは変えないでください。
重要なのは、まずはじめに「30分」という制約を設定することです。その制約を設定してしまえば、それをクリアするアイデアは必ず出てきます。そして、メンバーの高い集中力を引き出すことによって、「最高品質の会議」を実現することができるのです。
P50
これは、経験上可能です。
数日前に会議資料を配布し目を通しておいてもらい、決めなければいけない事項等の論点を事前に共有することで、アウトプットに時間をかけることができます。
会議のよくある光景として、論点がずれてしまったり、仲良し同士が冗談を言い合ったりしがちですが、30分の制約があれば、話を戻しやすくなります。
何を決めるのかを明確にする
事前に「何を決めるのか?」を共有しておくとともに、事後に「何が決まったのか?」が明確になっていない会議は、必然的に品質の低いものとなります。
(中略)
さらに、「何が決まったのか?」も明確に知らされなければ、会議の品質は致命的な欠陥を抱えます。なぜなら、マネジャーが”決まった”と思ったことが実行されないからです。実行の伴わない意思決定は無意味です。
P67
延々と話し合った後に、「で、何を決めないといけないんだっけ?」なんてことになったことはありませんか?
また、会議で決まったことが、いつになっても実行されていなかったことはありませんか?
「あれは決定ではなく、次回まで持ち越しだと思っていた」とか、「自分が担当する仕事だとは思わなかった」とか、「納期にまだ余裕があると思っていた」とか。
これを解決するための方法です。
「何を決めるのか」を事前の資料配布の際に共有しておき、「決まったこと」は議事録として共有する。
「議事録」において重要なのは、「結論」「ネクストステップ(期日)」「担当者」の3点を明確に記すことです。しかも、一目で理解できるように、文章ではなく要点だけを箇条書きで記す。これが機能する議事録の要件です。
P71
本書では、「決めるべき事項」から「議事録」までがひとつにまとめたフォーマットが紹介されています。
エクセルで一覧にまとめたイメージです。
気になる方は、ぜひ読んでみていただければと思います。
『生産性』|伊賀泰代(ダイヤモンド社)
生産性を上げることの重要性が書かれた名著です。
本書の第9章「マッキンゼー流 会議の進め方」が非常に参考になるので、ご紹介します。
本書のポイントはタイトルどおり「生産性」です。
コントロールすべきは量ではなく質であり、生産性です。そして、生産性を上げるにはインプットを減らす方法に加え、アウトプットを高めるという方法もあります。これを会議に当てはめれば、「今は会議時間を短くすることが大切なのか、それとも会議の成果を高める方法を考えるべきときか」という視点が生まれます。
P206
生産性の計算式は、次のとおりです。
生産性=「アウトプット(成果)」÷「インプット(投入した資源)」
つまり、会議はただ短ければいいわけではなくて、成果を高めるためには時間がかかる会議があってもいいということです。
「成果」÷「投入した資源」=「生産性」
①「成果100」÷「会議時間1時間」=生産性100
②「成果100」÷「会議時間0.5時間」=生産性200
③「成果200」÷「会議時間1時間」=生産性200
④「成果800」÷「会議時間2時間」=生産性400
⑤「成果100」÷「会議時間2時間」=生産性50
達成目標を明確にする
「〇〇プロジェクトの予算について」といった文言ですが、これでは会議中に達成すべきことが「予算について話し合うこと」なのか、「予算の詳細を確認すること」なのか、「予算の総額について決定すること」なのか、まったくわかりません。
P207
会議で議論すべきことについて、メンバーがそれぞれ異なった認識を持っていれば、正しい目標に行きつくわけがありません。
会議での達成目標について、メンバーに誤解がないように明示することが大切です。
資料は説明させない
会議の時間の中で最も生産性が低いのは、資料を用意した人がその資料を説明するのに使う時間です。実はマッキンゼーの社内会議では、多くの場合、資料の説明は行われません。
(中略)
それぞれが配られた資料に黙って目を通せば、たいていの資料は2分ほどで読むことができます。冒頭に「今から2分間、資料に目を通してください」と言って済むのであれば、10分かけて作成者の説明を聞くのに比べ、生産性は5倍も高くなります。
P210-211
『最高品質の会議術』では資料の事前配布の方法をご紹介しましたが、どうしても事前配布できない場合は、こういう方法も効果的です。
お役所では、会議の場で説明するために、説明用の原稿を作る悪習があります。そして会議が始まると、その原稿を一字一句丁寧に読み上げていきます。聞いている方はみんな飽き飽き。上記の方法を使うと、その苦痛な読み上げ時間を省略できますし、説明者側も原稿をつくる手間を省略することができます。(実はこの原稿をつくるのにも、上司の確認が必要だったりして、ムダな時間のためにムダな作業をしているんです・・・)
ポジションをとる
生産性の低い会議とは、時間が長い会議のことではなく「決めるべきことが決まらない会議」のことです。
P213
マッキンゼーでは「自分の意見を明確にする」ことを「ポジションをとる」と呼び、全員が身につけるべきベーシックなビジネススキルだと教えています。
(中略)
ビジネス上の意思決定とは、「確実にはわからない未知の(未来の)ことについて決断すること」です。確実にわかっていることについての決断は誰にでもできるし、できても大きな価値はありません。
P214
世の中には、練習をしないと自分の意見が決められない人が案外たくさんいます。たとえ自分には何の責任もなくても、右か左か決められないのです。(中略)いつまでも「もう少し調べてから・・・」とか「一概には言えないので次回もう一度議論を・・・」などとしか言えない人になってしまうのです。
P215
会議そのものががコストなので、決めるべきことを決められず結論を先送りにすれば、その分だけ組織の生産性を下げることになります。
そもそも、組織の意思決定に参画するような序列やポジションにそういう人がいること自体が、組織としての欠陥だと言わざるを得ないと思います。
後々「老害」と言われないように、若いうちから練習してみてほしいと思います。
意思決定のロジック
会議で決めるべきことが決まらない主な理由として、次の4点があげられています。
①社長や本部長など、意思決定者が会議を欠席した
②意思決定のロジックが明確でなかった
③データや資料がそろっていなかった
④会議の主催者が「決める」ことにリーダーシップを発揮しなかった
P216
そして、③の「情報不足で意思決定できなかった」とされているケースの多くに、実は②の「ロジックが足りなかった」ケースが含まれているそうです。
ロジック 1ドル120円よりも円高になったら為替予約をする
情 報 1ドル119円になった
結 論 119円で為替予約をする
会議の中で、「1ドル120円よりも円高になったら為替予約をする」というロジックが決まったら、後日円高になったタイミングでそのとおり予約すればOKですよね。119円になったからといって、あらためて会議を開く必要はありません。
でも、このロジックが決まってない場合、為替レートが動くたびに会議を開かないと意思決定できない恐れがあります。
会議が不調に終わった際は、意思決定するためのロジックがあったかを振り返ってほしいと思います。
もしロジックがないようであれば、「では、どういう条件であれば意思決定できるのか」を会議の中で確認しておけば、次回以降の会議の回数を減らすことができると思います。
まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
会議の効果的な進め方なんて誰も教えてくれなかったので、ぼくにとってこの2冊との出会いは本当に貴重でした。
会議やファシリテーション関連の本は多数出版されていますが、迷った時はこのレビューを参考にしていただければ幸いです。
2冊に共通していること。
それは、会議の目的は「意思決定」であるということ。
我々は、そこに最短距離でたどり着けばいいわけです。
時間は有限です。
ひとりでも多くの方が、会議地獄から生還できることを願うばかりです。
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