戦略的に休む!|自衛隊の「戦力回復」に学ぶ「働き方改革」|折木良一『自衛隊元最高幹部が教える経営学では学べない戦略の本質』

自衛隊働き方改革

こんにちは!

元公務員で今はシュフをしているシロイクジラです。

今回のテーマは「働き方改革」。

公務員時代にも担当していた馴染み深いテーマです。

ご紹介する本は『自衛隊元最高幹部が教える経営学では学べない戦略の本質』です。

「自衛隊」と「働き方改革」がリンクしない方も多いと思います。

キーワードは「戦力回復」です。

簡単に言うと「戦略的に休む!」です。

働き方改革でお悩みの方はすでにいろんな本をお読みになったと思いますが、本書はまったく違った視点から参考になると思います。

難しくないので、さっそく見ていきましょう!

紹介する本

書名 自衛隊元最高幹部が教える経営学では学べない戦略の本質

著者 折木良一

目次

本書における戦力回復の位置づけ

本書そのものは、タイトルのとおり「戦略」がテーマです。

著者は元統合幕僚長。

つまり、陸海空すべての自衛隊を束ねる、自衛隊のトップだった人です。

なので、内容も非常に緊張感があります。

私は、防衛大学校を卒業してから自衛隊の最高幹部である統合幕僚長の任に至るまで、訓練や教育、あるいは実務を通じて、戦術・作戦・戦略について考えつづけてきました。

そして、それらは失敗すれば文字どおり、部隊が敗れ、隊員に「死」が訪れることを意識したものでした。つまり、自衛隊で考える戦術・作戦・戦略は、絶対に相手に勝つ、負ければ死ぬ、というとてつもない緊張感のなかで構築されているのです。

P23-24

そして、企業の経営戦略などに目を向けた時、見落としがちなポイントとして挙げられているうちのひとつが、今回のテーマである「戦力回復」です。

そこで戦略を実行する人たちはつねに一定のモチベーションを保ち、いくら働いてもパフォーマンスが落ちないという、「つねに人は合理的な行動をとる」というモデルのような存在として位置づけられているのではないでしょうか。(中略)

そこで重要なのは、十分な休息・休養をとって鋭気を養うことであり、戦略実行のためには「戦力回復」という視点が入っていなければ、どんなに素晴らしい戦略をつくったところで、中途半端にしか機能しません。

P48

無意識のうちに、「社員は疲れないし倒れない。年間を通じて同じ質のパフォーマンスができる」という前提になってはいないでしょうか?

ですが、人を大切にして、適切な休養を与えないと、結局組織のパフォーマンスは上がりません。

人は必ず疲弊します。

いざチャンスを迎えた時に自軍がボロボロで身動きが取れないようであれば、何のための戦略かわからなくなってしまいます。

本書では、第7章で「戦略回復」について詳しく書かれています。

戦略に関連する本はたくさんありますが、「戦力回復」に触れている本は珍しいと思います。

「休む」ことで戦略の成功確率は上げられる

「「休む」ことで戦略の成功確率は上げられる」

これは、本書第7章のサブタイトルそのままです。

時間をかけ良い戦略ができあがったとしても、その戦略の実行にあたって、多くの社員がダウンしてしまえば、最終的な目的達成は難しくなります。

絶対に負けないためにも、「休む」ということによってその戦いを継続するという意識が必要なのです。

P204

本書では日本と欧米の労働時間と睡眠も時間について触れられており、日本が欧米と比較し睡眠時間が短い一方で、労働時間が長い傾向にあると述べられています。

そのうえで、核心をつくひと言。

問題の核心は、そうやって日本人が睡眠時間を削り、休みをとらずに長時間労働しているにもかかわらず、労働生産性、つまり仕事のパフォーマンスが低いという事実です。

P207

つまり、戦力回復が十分に機能していないため、労働時間が長いにもかかわらず成果が上がっていない。

ムダに長く働いてるだけ。

最悪ですね。

このことからも戦力回復の重要性がわかります。

逆に考えると、戦力回復を適切に行うことで、「戦略を計画通りに遂行し、成功させる確率を高めることができる」と言えます。

【補足】戦略そのものは目的ではない

仕事において、「戦略を作ること」あるいは「戦略を実行すること」が目的化してしまっている現場が多くあると思います。

ですが、戦略とは本来「戦争目的を達成するための手段」でありロードマップです。

戦略を実行して目的を達成しなければ、戦略の意味がありません。

なぜあえてこんなことを言うかというと、特にお役所では「1年かけて戦略(計画)作って、その後誰も見ない」や「戦略(計画)に基づいて行動して、それで自己満足した」的なことがよく起こるからです。

目的を達成していないのであれば、その戦略は失敗だという自覚がないのです。

働き方改革と戦力回復

ところで、なぜ働き方改革が必要なのでしょうか?

ワークライフバランスとか労働基準法順守とかいろいろあるでしょうが、組織論としてはパフォーマンスの維持向上のためだと思います。

「成果を上げるため馬車馬のように働く」

短期的には、それが必要な場合もあるかもしれません。

でも長期的に考えると、無理は必ず社員に跳ね返ってきます。

社員1人の欠員は、他の社員の負担増につながります。

それにより労働条件が悪化すれば、離職の引き金にもなります。

そうやって穴だらけになってしまった組織には、戦略の達成など不可能です。

そのような状況を防ぐために、働き方改革が必要なのだと思います。

要するに「働き方改革(企業)」=「戦力回復(自衛隊)」と言えるでしょう。

厳しい環境で任務や仕事に従事する自衛官やビジネスパーソンが、ある日突然潰れてしまうことが多いのは、じつはストレスそのものではなく、「蓄積した疲労」を回復するのに十分な休息を与えられていないから、ということなのです。

P211

社員の休み方を左右できるのは、組織のなかでも経営幹部や人事部など一握りです。

働き方改革は組織にとっての重要な業務だということを、ぜひ理解していただきたいと思います。

社員一人ひとりが十分な睡眠時間を確保し、適切なタイミングで休日・休息をとれるように配慮することは、組織として最大限のパフォーマンスを発揮するための環境整備の一環とも言えるでしょう。睡眠は、じつは仕事そのものなのです。

P208

まとめ|「働き方改革」ではなく「戦力回復」を

「人は疲労し、疲労が人のパフォーマンスを低下させる」という前提に立ったうえで、組織のパフォーマンスを維持する最大限の努力、つまり「戦力回復」を戦略的に行い、(中略)スタッフの疲労をつねにコントロールすべきなのです。

P217

残念ながら、「働き方改革」という言葉は陳腐化しています。

なので、多くの人が真剣に取り組もうとしません。

だからこそ、この際「戦力回復」という直接的な言葉を経営に取り入れるべきだと思います。

なぜなら、その言葉に抱く危機感が違うからです。

遅発疲労でパフォーマンスが低下してしまうようでは、極端にいえば日本国が消滅してしまう可能性を高めることにすらなりかねません。

P216

みなさんの組織は、組織そのものがなくなってしまうという危機感をもって「働き方改革」に取り組んできたでしょうか?

働き方改革とは、政治家や国の役人の戯言だと思ってはいないでしょうか?

職場に「戦局回復」という考え方を取り入れ、戦略的に休む習慣を作ることが必要だと思います。

ぼくが勤めてきたお役所はなくなりはしないでしょう。

ですが、戦略回復を怠ってきたツケは顕著に表れています。

「人材の劣化」というカタチで。

部下だけでなく上司にも余裕がなくなったため、部下に対する指導教育まで手が回らなくなっています。

みんな目の前の仕事で精一杯なんです。

そして、そういう環境で育った部下は、指導教育方法を教わらないまま上司になっています。

そして相変わらずの多忙。

メンタルダウンは以前は若手に多かったですが、今では管理職のメンタル休職も珍しくありません。

そうやって後進育成がおろそかにされて、どんどん人材が劣化しています。

「法律論ができない」、「自分の非を認められない」など致命的になっている印象があります。

よくある「不祥事の隠ぺい」などもこの系譜ではないかなと思っています。

カナヘビ

それでも役所はつぶれませんが、民間企業ではあっという間に競合にシェアを奪われるってこともあると思います。その時必要な戦力がなければ反撃すらままならない危険性もあるのではないでしょうか。

具体的にどういう方法で戦力回復を行えばいいのか?

それは、みなさんがそれぞれ組織にあった方法を模索していただくしかないと思います。

ただし、本書にもヒントはあります。

自衛隊は、「人は疲労し、疲労が人のパフォーマンスを低下させる」ことを前提として日ごろの訓練を行っています。

P205

人は必ず疲弊します。

それでもなお社員が活躍し続けられるような環境を、「戦力回復」をキーワードに、作っていただければと思います。

ブラック企業にいた一人として切に願います。

さいごに。

実は、この問題は戦時中から明らかでした。

日本軍の失敗を研究した『失敗の本質』を引用して締めたいと思います。

ここまでくると、精神的というか構造的というか、もはや日本人の根源的な問題なのかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございました。

日本軍はまた、余裕のない組織であった。(中略)たとえば、日本海軍の航空機の搭乗員は一直制であとがなく、たえず一本勝負の短期戦を強いられてきた。米海軍は、第一グループが艦上勤務、第二グループは基地で訓練、第三グループは休暇という三直制を採用できた。(中略)ガダルカナル戦では、海兵隊員が戦争のあい間にテニスをするのを見て辻政信は驚いたといわれている。

『失敗の本質』P385
紹介した本

書名 自衛隊元最高幹部が教える経営学では学べない戦略の本質

著者 折木良一

出版 株式会社KADOKAWA

自衛隊働き方改革

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