この本は子ども向けですが、アメリカザリガニが日本に来た経緯が、実にわかりやすくまとめられています。
アメリカザリガニ流入の経緯
時間軸 | できごと(要約) |
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東京帝国大学(現東京大学)の渡瀬庄三郎教授(動物学)が、ウシガエルを養殖し食用にできないかと考案。 | |
1918年4月18日 | ウシガエル(オス・メスそれぞれ12匹)がアメリカのニューオーリンズを出港。 |
1918年5月18日 | ウシガエルが横浜港へ到着。 メス7匹は船内で死亡。 |
ウシガエルが東京大学の伝染病研究所の池に移される。 | |
1918年7月1日 | ウシガエルのメス1匹が産卵。 ウシガエルの飼育が日本で可能であることがわかった。 |
1921年秋 | 渡瀬教授の弟子である河野卯三郎氏が、ウシガエル養殖場(鎌倉養殖場)を神奈川県鎌倉郡小坂村岩瀬(現大船)に開設。 |
1930年 | 河野氏の兄がウシガエルのエサとして、アメリカからアメリカザリガニ200匹を持ち帰る。 日本に着いた時に生きていたのは20匹。 (アメリカザリガニが初めて日本に流入) |
20匹のアメリカザリガニは、大船のウシガエル養殖場で越冬。 | |
不明 | アメリカザリガニがウシガエル養殖場から逃げ出す。 |
ここまでわかっているので、学術的な資料をあたれば、物語の真偽を含め、詳細を確かめることができるのではないかと思います。
本書の初版発行は1992年。
自然環境を大切にしようする思いから、アメリカザリガニも含め「いろいろな生き物が住める自然を守ろう」という善意で書かれた本だと思います。
ただし、アメリカザリガニが特定外来生物として国内の生態系を脅かしている今日に読むと、考え方の違いに怖さを感じるというか、愕然としてしまうところもあります。
(時代によって価値観が変わるという良い事例にはなると思います)
どうやって飼っておいたらいいのか、養殖場のおじさんたちは、しらなかったようです。アメリカザリガニたちは、かんたんに池からにげだしてしまったのです。
P11

やさしく書いてあるけど、正直笑えないです・・・
アメリカザリガニが日本に流入した経緯についてはこの程度で、あとはザリガニの生態などが書かれています。結構詳しく書かれているので、大人でも十分楽しめると思います。
タンカイザリガニとウチダザリガニ
本書を読んで初めて知ったのが「タンカイザリガニ」の存在です。
息子たちはザリガニが好きなので、図鑑などでもよく見ていました。
「日本には在来種の二ホンザリガニ、外来種のアメリカザリガニとウチダザリガニの3種類のザリガニがいる」と書かれていたはずです。
では「タンカイザリガニ」とは?
本書を要約すると次のようになります。
タンカイザリガニは滋賀県の淡海溜池(淡海湖)に生息しているザリガニ。
1926年~1929年、日本政府が食用としてアメリカオレゴン州から輸入。
農林省が中心となり、各県の水産試験場で飼育。
3000匹のザリガニを各試験場に送ったが飼育に失敗。
唯一、滋賀県の淡海溜池だけが繁殖に成功。
(本書P37~38を要約)
せっかくなので、ウチダザリガニについてもまとめてみます。
1930年、農林省がアメリカオレゴン州から476匹のザリガニを輸入し、北海道の摩周湖へ放す。
その後、消息が不明に。
1957年8月、九州大学の三宅先生グループが摩周湖湖底でザリガニを発見。
北海道大学で北海道の動物について研究をしていた内田亨先生から名前をとり、ウチダザリガニとした。
(本書P39~41を要約)
なお、著者はタンカイザリガニとウチダザリガニの2種を飼育し観察したそうですが、体色も形も行動もそっくりであり、同じ種かもしれないと書かれています。(本書が発行された時点では判明していなかったようです)
現在では、環境省のホームページにもあるように、2種は同一種とされているようです。
ウチダザリガニの亜種とされるタンカイザリガニ(P. l. leniusculus)も滋賀県に定着している。
タンカイザリガニとウチダザリガニは近年の研究では、同種のP. leniusculusとされる。
環境省「日本の外来種対策」より引用(https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/list/L-kou-02.html#)
まとめ
ザリガニの知らないことがたくさん詰まった一冊です。
体の部位の他、寄生虫がいるので生で食べてはダメ、なども書かれています。
今は法律の規制によりお店では買えなくなったアメリカザリガニ。
本書で昭和の時代に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
一般的な本とは異なり、生態だけでなく、外来種流入の経緯まで記されているので、SDGsに絡めた学校の自由研究にもぴったりだと思います。
書 名 だれもしらないザリガニの話
著 者 杉浦 宏
出版社 童心社
本書は絶版になっております。こちらもご覧ください。
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